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灯火

更新日:2020年1月1日


今年は

大切な人を

立て続けに失った。



両国大会前にじいちゃんが亡くなり


つい3日前ばあちゃんが亡くなり



といっても

もう2人とも90に差し掛かるころだったので

覚悟はしていた。




でも






急いで帰郷して


いざ、その顔をみたら


冷たくなった身体に触れたら


涙が止まらなかった




いつまでもいると思った


居ることが当たり前だった


その当たり前が


当たり前じゃなくなったときに


やっと気づくんだ




人間って




なんて愚かな



生き物なんだろう










どうしてあの時


ああしてやれなかったのだろう


こうしてやらなかったのだろう


何で気づかなかったのだろう


もっと話をしたかった


もっと色々思うこと教えて欲しかった










気づけば私は



前ばっかり


一心不乱に突き進んで


目標ばかり見据えて




今にも消えそうな灯火に


目もくれず



自分の目指すところばかり追いかけて





一番心のそばで


支えてくれる、見守ってくれる


大切な「家族」と




私は




向き合っていなかった










思えば私は


あなたの話を


どれだけできるだろう


どれだけのことを知っているだろう







自分の話をするばかりで



気づけば


あなたの抱えている


辛い、寂しい、苦しい悩み



そういうのを


一度も


聞いたことがなかった







いつも会いに行けば


笑って迎えてくれて


私の夢、頑張ってることを


あたたかく


見守ってくれていたね。







もっと話をすればよかった


もっとあなたの話を


聞いてあげればよかった


心の奥底で

もっと聞いてほしい話が


いっぱいあっただろうに









幼い頃から「表現する」環境で


どうやって「伝えよう」と


どうやって分かってもらおうと


「伝える」ことばかり考えて




「聞く」ということを


分かってあげるということを



一度も



したことがなかった





私は結局




あなたのこと




何ひとつ知らなかった


知ろうとしてあげていなかった






知らないまま


私が前ばかり見ているうちに


ろうそくの火は


その身をすり減らし


燃え尽きてしまった







残された家族も


家にあるものも


知らないうちに変わっていて


あれ、

私、家族のこと

どれだけ話せるだろう







みんなで

詩吟という目標に突き進んでいるから


それなりの繋がりがあるけれど





いざ、


ひとりの人間として


となった時


家族のことどれだけ話せるだろう








そう言えば知らないことばかりだ



ほとんど断片的にしか


話さなくても


心で通じてると思っていたけど




そうじゃないのかもしれない


敢えて深掘りしない優しさも


必要だとしても



その灯火が消えないうちに


向き合わないといけないなと


もっと話を聞いて

その燃え続ける灯火の芯にある

その人を

知らなきゃいけないなと


思うようになった









ろうそくの火は


ずっと燃えるわけではない



フッと息を吹けば消えるし


風の当たりどころが悪ければ

それも簡単に消えてしまう


水がかかれば次に灯るのが

難しくなり


胴体に熱や衝撃が加われば

簡単に折れて


折れたまま

火がついていれば


全てを焼き尽くしてしまうこともある



祖父母のろうそくは

ジリジリと静かに

最後まで燃え続け

綺麗に消えていった








暗い出口のないトンネルで

道に迷ったとき



灯火一つじゃ周りは真っ暗

手元しか見えない


二つあれば

お互いの顔が見えて


三つあれば

周りが見えてくる


四つあればその少し先まで見渡せる


灯火が集まれば集まったぶんだけ

あかりになる




進むのが怖くて

逃げ出したくなった時は

一緒に手を温め離さないようにしよう


逃げてもひとり迷うだけ


誰かの灯火が消えかけたら

誰かが自分の灯火を分けたらいい


誰かのろうが折れたり欠けたりしたら

ろうを少し分けて治してやればいい



それが残された家族にできること




過去を悔やんでも


今が変わるわけじゃなくて


これから大切にすべき事に


気づかせてくれたんだから




たくさんの灯火に恵まれている間に


ここで気付いてよかったんだと


祖父母に感謝して




これからを生きねば





お互いの灯火が


途中で消えることなく


最後まで


燃え尽きるまで





森田夏代



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